*[資料][キーワード][カースト]「カースト」記述さまざま〜その6
ジャーティとヴァルナ
今回も『事典』の続きです。いよいよジャーティとヴァルナの関係の説明になります。
以上の4ヴァルナの区分が社会の大枠を示したものであるのに対し,ジャーティは地域社会の日常生活において独自の機能を果たしている集団であり(たとえば壺作りのジャーティ,洗濯屋のジャーティ),その数はインド全体で2000~3000にも及んでいる.
ジャーティとヴァルナの間には共通した性格(内婚,職業との結合,上下貴賤の関係)が認められ,また不可触民のジャーティを除くすべてのジャーティが4ヴァルナのいずれかに属している.このため,従来しばしばジャーティとヴァルナが混同され,そのいずれもが<カースト>と呼ばれてきた.しかしカースト制度を理解するためには,この両概念をひとまず切り離してみる必要がある.以下ではカーストという語をジャーティの意味に用い,ヴァルナについてはこの呼称をそのまま用いた.ただしバラモンという呼称のみは,カースト,ヴァルナいずれの範疇にも用いられる.
出所:辛島昇ほか監修『南アジアを知る事典』平凡社、1992年10月、136-7ページ。
カースト制度を見る視点として、個々の社会集団としてのカースト=ジャーティの中身に注目することが重要だということでしょうか。『事典』では、以後、「カースト」=「ジャーティ」の説明が続きますが、それはまた後日に扱いたいと思います。
さて、Wikipediaやはてなキーワードでは、ジャーティとヴァルナの関係はどのように説明されていたでしょうか。
カースト制度は基本的にはバラモン・クシャトリア・ヴァイシャ・シュードラの4つの身分(ヴァルナ)に分けられているが、その中で更に細かく分類されている。
カーストは一般に基本的な分類が4つあるが、その中には非常に細かい定義があり、結果として非常に多くのカーストが存在している。
「身分」の中で「分類されている」、とか、「非常に細かい定義」がある、という4ヴァルナに重点を置いた説明です。『事典』の方は、現実の社会集団=ジャーティに重きを置いています。
はてなキーワードはどうでしょうか。
インドの職能を基にした階級制度。もしくはその中の階級
最初期には、
* バラモン(僧侶)
* クシャトリヤ(軍人・貴族)
* バイシャ(平民)
* シュードラ(賎民)
の4階級(種姓 ヴァルナ)であったが、時代と共に職能毎にさらに細分化、序列化していった。現代では1000のオーダーに昇るサブ・カースト(ジャーティ)があると言う。
こちらも「カースト」=「ヴァルナ」としています。
Wikipediaもはてなキーワードもヴァルナの細分化としてジャーティをとらえています。しかし、4月4日のエントリでみたように、『事典』によれば、「時代が下るとともにヴァルナと職業の関係に変化が生じ」た、といいますから、不変のヴァルナが細かくなってというとらえ方には問題があるでしょう。
ヴァルナとジャーティについては、丁寧に説明する必要がありそうです。
今回はここまでとします。
既に一日空いてしまいましたが、ゆっくり時間をとれるようになるまで間があきそうなので、次回の更新はしばらく後になると思います。